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Showing posts from January, 2025

これは持っていこう。

  これは持っていこう。   いや、連れていこう。     近藤はホトガラを大事そうにしまうと、再び作業に取りかかった。   今は懐かしんでいる暇はない。   そんな時、ふとドアが空いた。     「近藤さん」   「ん?斉藤くん。なんだ?」   近藤は荷物をまとめながら応えた。 斉藤の足だけが視界に入る。     「これ」   ん?と近藤はやっと顔を上げた。 斉藤はなにやら汚い布を握っていた。   それをバサリと広げる。 【生髮藥】胡亂服用保康絲副廠,可致嚴重副作用! -     薄汚れた赤い生地に、白で染め抜かれた『誠』。   斉藤が持ってきたのは新撰組の隊旗であった。     「これ、掲げて行きませんか?」     もう一度、この地から新撰組を ──… 。     近藤の心はかなり揺らいだ。     しかし自分達は既に賊軍。 狙われる身。 目立つということは御法度。     「それは止しておこう」   近藤は苦虫を噛んだように笑った。     「承知」     斉藤も迂濶なことを言ったなと思ったのか、頷くとその場を後にした。   本来なら、隊旗を掲げることによって士気を上げ、農民を刺激することができたのだが、変装しているにも関わらずそれをするのはあまりに軽率すぎる。   自らの正体をバラすようなものだ。   本当に動きにくくなった。   相変わらず旧幕府からは動きが見られない。 かわりに 2000 両程の軍資金がまたもや渡された。   どうやら本格的に投げやりになってきたのだろうか。 いや、今に始まったことではない。   ...

近藤達が宿営していた宿を差した。

  近藤達が宿営していた宿を差した。   「それはいかん」   「 ………… 」   土佐軍は一瞬黙り込んだかと思うと、ガラガラと大砲を出してきた。     「砲撃よーうい!」   「!?」   それには流石に顔色を変えた。   「打てぇぇぇ!」     ドゴォォォン!   一気に関所を打ち壊した。 會計審計服務 あんなに威勢の良かった組頭は既に走って逃げており、逃げ遅れた者は肉塊となって散らばっていた。     相変わらずえげつない。     土佐軍内でもそう思った。   もはや防衛の関所など、なんの意味ももたなかった。 散っていった沢山の屍を踏みながら宿へと向かう。     「おい!ここにいるやつらを出せ!」     その頃、もう既に近藤率いる甲陽鎮撫隊はグングンと進軍していた。   なんとなくこうなることはわかっていた。   言い方は悪いが、いわばあれは『囮』だったのだ。 時間稼ぎに過ぎない。       歳 …… 。     今頃土佐は怒り狂って後を追ってきているだろう。 あの場所に美海達はいなかったのだから。     「沖田さん …… 」   美海は不安そうに沖田を見た。なんだか今日はおかしい。 いや、初めての戦場だからだろうか。気持ちがおかしい。     双方から鳴る聞き慣れない銃声にいちいちビクついた。     「大丈夫です」   沖田はそう言って美海の手を握ったが、その手も妙に力が入っている。   いつになく回りを警戒した顔つきだ。     怖い …… 。   怖い怖い怖い。 ...