近藤達が宿営していた宿を差した。
近藤達が宿営していた宿を差した。
「それはいかん」
「…………」
土佐軍は一瞬黙り込んだかと思うと、ガラガラと大砲を出してきた。
「砲撃よーうい!」
「!?」
それには流石に顔色を変えた。
「打てぇぇぇ!」
ドゴォォォン!
一気に関所を打ち壊した。會計審計服務
あんなに威勢の良かった組頭は既に走って逃げており、逃げ遅れた者は肉塊となって散らばっていた。
相変わらずえげつない。
土佐軍内でもそう思った。
もはや防衛の関所など、なんの意味ももたなかった。
散っていった沢山の屍を踏みながら宿へと向かう。
「おい!ここにいるやつらを出せ!」
その頃、もう既に近藤率いる甲陽鎮撫隊はグングンと進軍していた。
なんとなくこうなることはわかっていた。
言い方は悪いが、いわばあれは『囮』だったのだ。
時間稼ぎに過ぎない。
歳……。
今頃土佐は怒り狂って後を追ってきているだろう。
あの場所に美海達はいなかったのだから。
「沖田さん……」
美海は不安そうに沖田を見た。なんだか今日はおかしい。
いや、初めての戦場だからだろうか。気持ちがおかしい。
双方から鳴る聞き慣れない銃声にいちいちビクついた。
「大丈夫です」
沖田はそう言って美海の手を握ったが、その手も妙に力が入っている。
いつになく回りを警戒した顔つきだ。
怖い……。
怖い怖い怖い。
パンパンパン!
どこから撃たれるかわからない。
皆は、これを伏見で経験したんだ……。
もう、昔とは違う。
戦争なんだ。
美海は自分の腰に刺さっている刀が、酷く脆い棒に見えた。
もう時代が違う。
嫌でもそれを痛感させられた。
パンパン!
どんどんと銃声が近づいているのがわかる。
山崎さんが言っていた通りだ。
こんなの
───地獄だ。
自然と手が震える。
それを悟られないように沖田の手を強く握った後、手を離した。
なんだこれ……。
なんなんだ。
呼吸が乱れる。
カラカラと喉が渇く。
体が感じる。
『死』への恐怖。
一歩一歩、確実に近づいているのがわかる。
刀じゃない。どこから飛んでくるかわからないたった小さな鉛玉に怯えてる。
「来たな。火を投げろ!」
近藤がそう言うと、隊士が各々に火を撒いた。
ぼぅっと家が燃える。
皆、何も話さない。
原田でさえ、冗談を言わない。
「こんなことしたら、敵に場所がわかりますよ!?袋のねずみじゃないですか!」
「美海さん。落ち着いてください」
沖田が宥める。
「でも!」
「大丈夫だ。これで一先ず目眩ましと、家から撃たれるのを防げるはずだ。伏見でも土方さんが家をぶっこわしてた。大丈夫だ」
永倉が美海の背中をポンと叩いた。
「永倉さん…」
「美海。焦るな。落ち着け」
斉藤が前から目を離さないが、そう言った。
そのとおりだ。
落ち着け。
落ち着け。落ち着かなきゃ。
美海は自分に言い聞かせる。
「射撃よーうい!」
近藤が左手をあげて指示した。
近藤も実際に射撃を指示するのは初めてである。
「撃てぇ!!!」
パンパンパン!
撃ったのは良いものの、一通り打つと銃声は止んだ。
下手すぎる。
近藤は予想以上に上手くいかない射撃に焦り出した。
やはり、その場しのぎで集めた隊士では無理があったか。
歳。どうすればいい?
その間にも、射撃隊や隊士は打たれていく。
血が吹き出し、倒れた。
あちらも数人倒れる。だがこちらの負傷者の半数にも満たない。
まさにそこは地獄絵図──。
「う…ぉえ……」
美海はその場で嘔吐した。
「大丈夫ですか!?」
沖田が美海の異変に気付き、背中を擦る。
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