「皆さんもお気をつけて!」
「皆さんもお気をつけて!」 握られた手をそのままに後ろの隊士たちにも笑顔を振りまいた。 「怪我したら手当てを頼むぜ。完治するまで手厚くな。 ほらさっさと行かねぇとここで斬られちまう。」 永倉はにやにや笑いながら三津の頭を撫で回し,巡察に向かった。 『原田さんも永倉さんも賑やかで面白い人やなぁ。 流石に屯所の前では敵も斬りかかって来んと思うけど。』 一体誰に斬られるんだか。 ふふっと笑い目を細めて一行を見送った。 「 … 原田さんは斬っても死なないし,永倉さんは怪我しても気付かないですよ。」 ぼそりと呟く声がしたと思えば不貞腐れた総司が横に立っていた。 「びっくりした!」 総司はむすっと腕を組み次第に小さくなって行く隊士の列を見つめていた。 『芹沢さんが三津さんに会いたがってるってだけでも気が気じゃないのに。あの二人ときたら … 。』 「沖田さん怒ってる?」 何だか冷たい空気が漂ってる気がして腕をさすりながら総司を見上げた。 「当たり前じゃないですか!全く油断も隙もない!」 声を荒げてからはっと口を押さえた。 ゆっくり視線を斜め下に向けると三津が豆鉄砲を食ったような目で自分を見ていた。 「あの … ほら!あんな軽々しく手を握るような人に笑顔を向けちゃ駄目です。何をされるか分かりませんから!」 焦った総司はぽかんとする三津を前に必死に取り繕う。総司は急に怒鳴ったのを謝らねばとあたふたしていると,三津は目元を綻ばした。 「沖田さんて私のお父さん?」 ...