「薄着で外へ出るな
「薄着で外へ出るな。日が長くなったとは言え、まだまだ冷える」
「山口先生……」
相変わらずの仏頂面だったが、言動には温もりが宿っていた。
「あんたはいつまで俺のことを先生と呼ぶ?階級で言えば同等だろうに。歳も近いのだから、先生呼びは止めてくれ。http://jeffrey948.eklablog.com/-a215110913 https://avisterry.futbolowo.pl/news/article/news-24 https://www.beclass.com/rid=284b42b6576f6f4c9e1d ……俺よりも歳上の山野のことは下の名前で呼んでいるでは無いか」
突然のその言葉に驚いたが、彼なりに親しみを表しているのだろう。言動で云えば、圧倒的に山口の方が大人びているのだが。
「……では、山口さん?」
「…………まあ、良い」
何処か不服そうではあったが、納得したように小さく何回か頷いていた。
山口は桜司郎の隣へ立つと、空を見上げる。その横顔を見詰めると、桜司郎は口を開いた。
「山口さん。今後私たちはどうなるのでしょうか」
「……そうだな。会津へ向かうか、体制を立て直してから同志を募って戦うか、……このまま解散か。どれかだろうな」
解散、の一言にドキリとする。もはや新撰組単体ではどうにもならないところまで来ている、そのことは重なる戦で痛感していた。「……山口さんはどれが良いと思います?」
「俺か。俺は……そうだな。会津へ行くのが良いと思う。薩長の連中は会津を赦しはしないだろう。会津も徹底抗戦をするだろうから、奴らと戦うのであればそこが確実だ。それに……」
「それに?」
「俺たちは会津公無くしては存在出来なかった。会津の一大事にこそ、命を賭けるべきだと思う」
いつも淡々と的確な指摘をする山口だったが、その口調には熱さのようなものを秘めている。
──もしも、新撰組が会津へ行く選択肢を選ばなかったとしたら。山口さんはどうするのだろう……
微かに頭を過ぎったのは、別れの文字。親でも兄弟でも無い、ただの仕事仲間だというのに言いようのない寂しさが込み上げた。
顔色を曇らせた桜司郎を、山口は横目で見る。
「……あんたはどうしたい」
「……わたし。私は…………」
これまでの軌跡が浮かんでは消えていく。本当は気になることは山ほどあった。新撰組の今後は勿論だが、沖田の存在は何よりも大きい。それに桜之丞のこともまだ気掛かりだ。
だが──
「……局長の一存に従います。もちろん会津様への恩義はありますが……。それ以上に今の私が在るのは、局長が使用人として置いて下さったお陰ですから」
沖田は近藤を深く慕っている。彼への愛へ報いるのであれば、近藤の意思に沿って動くことが一番なのでは無いかと、この甲府までの道中に考えていた。
「そうか。そこは俺も同じ考えだ。あくまでも隊の方針に従う──」
突然山口は何かを感じ取ったように口を噤む。そして一、二回辺りを見渡すなり、桜司郎の腕を掴んでは近くにあった小屋の中へ入った。薬草の匂いが鼻腔を掠める。
「山口さ──」
「シッ」
有無を言わさぬ気迫で黙るように言われ、唇を引き結んだ。そして外を見る山口の視線の先を追う。
そこには、土方と永倉、原田の姿があった。物々しい空気を纏いながら、表情を強ばらせている。 医学所側に土方が、門側に永倉と原田が立っている。いずれも逆光でその表情は見えないが、静まり返っているお陰か声は聞こえた。
「……今まで、世話になったな」
長い間を置いて、永倉が土方に向かって口を開く。
まるで別れの言葉のようなそれに、桜司郎の心拍数は上がった。腹の底が嫌な感覚に包まれる。
「ああ。出会った頃は、これほど長い付き合いになるとは思わなかった」
土方にしては珍しく、感傷を孕んだ声だった。だからか、永倉はグッと言葉を詰まらせる。
代わりに原田が静かに言葉を紡ぐ。
「……土方さ、いや、歳さんは本当にまだ
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