「サヤと申します。
「サヤと申します。お三津ちゃんの姉とでも思っていただければ。」
『お三津ちゃんなんて初めて呼ばれたけど……。』
部屋の隅に正座して頭を下げたサヤをまじまじと見てしまった。どうしてこう堂々としていられるのか。
「そうですか!どうぞ楽になさってください。
お三津ちゃんあれから怪我の具合はどうだい?治ってない所などないかい?」
「あっはい!もうどこも痛くありません。しっかりと治療していただきましたから。」
三津がにっと笑うと近藤はより目を細めて目尻に皺を作った。https://www.easycorp.com.hk/blog/%e7%94%9a%e9%ba%bc%e6%98%af%e5%85%ac%e5%8f%b8%e8%a8%bb%e5%86%8a%e8%ad%89%e6%98%8e%e6%9b%b8-ci%ef%bc%9f%e4%bc%81%e6%a5%ad%e7%9a%84%e6%b3%95%e5%be%8b%e8%ba%ab%e4%bb%bd%e8%ad%89/
「いつも通りのお三津ちゃんだ。本当に会えて嬉しいよ。その笑顔にみんな随分と救われたものだ。それなのにこんな別れ方をしてしまったのが心残りでね。君を傷つけるだけ傷つけてその後始末を何も出来なかった私を許して欲しい。」
近藤は綺麗な姿勢で頭を下げた。それには三津も慌てた。
「近藤さん!頭上げてください!もう充分謝ってもらいましたから!それに近藤さんのせいなんかやなくてっ!」
近藤の側ににじり寄ってその大きな体を揺すった。
「本当にお三津ちゃんは優しいね。だけど手を上げたのが歳だろうがお三津ちゃんが自業自得と言おうがあの場で起きた事態の責任は全て私にあるんだよ。」
近藤は諭すように三津の頭を撫でた。「まぁそこは置いといて,今日は私からお三津ちゃんに伝えたい事があってね。」
今更伝えたい事とは何だろうか。これだか穏やかな顔をしてるのにまさか宣戦布告などされやしないかと内心ビクビクした。
「私はお三津ちゃんを敵だと思ってないからね。」
「……え?」
何の話か分からず三津は近藤に縋りつくような体勢のままぽかんとして穏やかな顔を見上げた。
「お三津ちゃんは間者のような真似は一切していないと今でも信じている。」
三津は勿論だと激しく頷いた。それを見て近藤は満足そうに口角を上げた。
「誰に対しても分け隔てないお三津ちゃんのその姿勢,私は好きだよ。」
敵でも味方でもない。そんな曖昧で都合のいい立場を近藤は好きと言ってくれた。それは三津にとって大きな事だった。
すぐさま距離を取り,畳に額を擦りつける勢いで頭を下げた。
「お三津ちゃんそんな事せずその可愛い顔を見せてくれないか?」
『近藤さんおだてるの上手いねんから。』
お世辞だと思いながらも可愛いと言われては仕方ない。三津は少し恥じらいながらゆっくり顔を上げて近藤と目を合わせた。
「素直で優しくて芯があって笑顔が可愛い。こんないい娘さんは他にはいないから是非とも総司の嫁にと思ったんだがねぇ。」
「は!?何を!?」
激しく動揺した総司は片膝を立てて身を乗り出した。
「冗談だ。何よりお前は身を固める気はないのだろ?」
近藤に落ち着け座れと諌められて顔を真っ赤にして座り直して俯いた。
「冗談はさておき,少しだけお三津ちゃんと二人で話がしたいんだが席を外してもらえるかな?」
近藤の視線はサヤに移った。サヤは三津を見る。近藤とサヤの顔を交互に見た三津は,
「すみません少しだけいいですか?」
困ったように笑ってお願いしますと軽く頭を下げた。
「分かりました。」
サヤは渋々だったが了承した。
「ありがとう恩に着るよ。おーいお絹!案内してやってくれないか。」
「はい,承知いたしました。」
何処に控えていたのか一人の女が静々と現れて三人を別の場所へ連れて行く。
「綺麗な方ですねぇ。近藤さんのいい人?」
ぽってりとした唇に羨ましい程立派な胸を持った彼女の背中を見送ってぼそっと呟いた。
「私の癒やしの一つなんだ。」
『癒やしの一つ……。あと二つ三つあるんだな……同じような場所……。』
デレデレ鼻の下を伸ばす近藤を三津は白い目で見ていた。それに気付いたのか近藤は小さく咳払いをすると本題に移ろうかと姿勢を正した。
三津もしゃんと背筋を伸ばす。二人で話とはそこそこ大事な事だとは思う。
『まさかここからが尋問の時間?』
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