「そーいえば、昔の皆さんってどんな

「そーいえば、昔の皆さんってどんな感じだったんですか?」

 

ご飯を口に入れようとした手を止めて美海が聞く。

 

 

「どうしたんだ、突然」

永倉が不思議そうに目を丸くする。

 

 

「いえね。前に島原で話してたこと思い出して。皆さんのこともっと知りたいなーと」

 

「あぁ。土方さんが女好きとかいう話かぁ!あったな」

 

 

「ごぶっ!」

 

こいつら俺の知らないとこで何話してるんだ!

 

 

今まで黙って食べていた土方が突如吹き出した。

 

 

 

「土方くん汚いよ。この前もお茶吹き出してたし」

山南が少し軽蔑の眼差しを向ける。

 

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「え!土方さん汚なっ!」

藤堂がドン引きした顔で言う。

 

 

「そういや美海は試衛館時代からはいなかったな」

斉藤が改めて言う。

 

 

「確かに。ここ一年ちょっとが濃かったからなぁ」

原田も頷く。

 

 

「もうすぐ二年かぁ」

 

永倉もなんだかしみじみしている。

 

 

 

「「「早いなぁ」」」

 

 

 

何この人達!

 

 

「俺達って昔からあんまかわんねぇよな?」

 

永倉が原田と藤堂を見る。

 

「あぁ」

 

「そだねー」

 

 

確かに。変わらなさそう。なんか学習能力なさそうだもんなぁ。

 

 

いつの間にか隊士達は片付けを済ませていて、気付けば残っているのは幹部だけだった。

「このまま今日は昔振り返り日にしましょう!」

沖田が提案する。

 

「いいな!やろうやろう!」

近藤が大賛成している。

 

 

 

「あんたは仕事さぼりたいだけだろ」

 

土方が釘を指した。

 

「む。じゃあ歳はやらないのか?」

 

 

 

「あぁ俺は

 

待てよ。

ここで俺がいなくなってみろ。

奴等あることないこと言うに違いねぇ。

 

 

 

 

「いや。やっぱりやる」

 

 

「ほぉら!歳も本当はやりたいんだろ!」

 

近藤がバシバシと土方の背中を叩いている。

 

ちげぇよ!お前らの見張りだよ!

 

と思うが口には出さない。

 

 

「土方さんの了承も得ましたし、昔の土方さんについて語りましょう!」

 

いつになく沖田の目は輝いている。

 

 

「なに!?土方さんの秘密が知れるんですか!?」

 

美海も目を輝かす。

 

「俺のことだけかよ!」

 

 

「だって面白い過去と言えば土方さんしかねぇ!」

 

永倉がニヤニヤとしている。

 

 

「確かに土方くんは変わったからねぇ」

 

「そういや土方さんは喧嘩師だったからなぁ

 

 

「よく俺らも地図見させられては駆り出されたぜ」

原田、永倉、藤堂はうんうんと頷き合っている。

 

 

「俺は道場が違ったからな」

 

「そうだよね。今思えば、自然にいたけど一は道場が違ったよね!」

 

へぇ。そういえば斉藤さん、昔道場が違ったって話してたな。

「よし!皆知らない頃の歳の話をしてあげようか!」

 

突然近藤が手を叩いて話しだした。

 

 

「聞きてぇ!めちゃくちゃ聞きてぇ!」

 

原田が身を乗り出す。

 

「俺も!超聞きてぇ!」

 

 

「近藤さん何話すつもりだ!断じて俺は反対だぞ!」

 

 

「じゃあ多数決でも取ろう!」

 

 

「聞きたい人!」

 

「「「はいっ!」」」

 

土方を除く全会一致で皆手を上げた。

 

 

土方は一人顔を真っ青にして縮こまっている。

 

 

「やべぇこれはやべぇよ駄目だよやべぇやべぇ

 

 

ブツブツとうめき声が聞こえる。

 

 

 

ガタッ

 

 

スタンッ

 

 

「何!?土方さんの恥ずかしい話やって!?俺もいれて~!」

 

 

「山崎さん!」

 

 

どこから聞きつけたのか山崎が屋根から降りてきた。

流石監察。情報網は侮れない。

 

 

「山崎くんまで俺は終わりだ。あんな過去、捨ててしまいたい。山崎くんまで終わりだ……

 

土方はそうとう病んでるようだ。

 

 

土方さんをこんなことにしてしまうなんていったいどんな過去が!?

 

 

「副長!大丈夫です!俺は口は固いんで!」

 

山崎が敬礼するが益々心配になる。

 

 

総司や美海に知れたら

ろくなことがねぇ。

絶対話を大きくしやがる。絶対。

 

 

土方は美海と沖田を恐怖の対象にしているようだ。

 

 

止める間もなく、近藤の話は始まった。


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